the garden of entropy

芸術カルチャーらへんが好きなKO学生が書く粗雑な感想たち。基本思いつきなので途中で投げ出したりするけど許してネ。

草間彌生作品における命の輝き

 日本を代表する前衛芸術家、草間彌生草間彌生の作品と言えば、周知のとおりあの水玉が支配する物質と世界のイメージだった。ポップでありながらどこか不安と寒気を感じさせる赤と白の斑点。何故人間はトライフォビアが多いのだろう。私もブツブツ蓮コラが嫌い。けど気孔だって細胞核だって精子卵子も毛穴も全て細かく開けられた穴と円だ。斑点は命の根源とだっていえそうなものなのに、私たちはその斑点を見て寒気を覚え不快になる。

 草間の作品では「目」と「男根」も増殖し続けている。闇の中でこちらを見ている無数の目。感情もなくただこちらを眺めている目。男根、というよりはもはや排泄物に見える円錐と円柱の中間みたいな形をしたそれがびっしりと詰まった世界。初期は肉塊のような薄紫色のなにかに支配された世界だったのが段々と腐りかけた有機物に生えるカビみたいなポップな色合いへと変化していく。いつか私が放置したメンマに生えたビビットレッドの丸くてぷっくりしたカビ、見た瞬間に背筋がぞわりとして分別も無視してゴミ箱に投げ込んだ。草間の展覧会を見ているとき、そのカビは生命の循環だったことに気が付いた。有機物(人間も含む)は循環、動くことをやめた瞬間に腐りはじめる。私たちも息が止まった瞬間、血が流れなくなったその瞬間から腐る。それは肉体という物質を得た時から決まっていたこと。しかし、いわゆる「死」と呼ばれるそれは終わりではない。腐り始めた瞬間、蛆虫やカビ、そして菌たちが肉体を分解しそして無へと(厳密にいうと、それぞれの中へと)還してくれる。それは命の円環であり、汚物に塗れ悪臭を放つ過程でありながら命が繋がっていくという崇高な瞬間でもある。

 草間の作品の斑点やどこかアボリジニの作品からの影響を感じさせる虫の絵、はたまた菌やゲノムのようなモティーフには寒気を感じさせる気持ち悪さと、その営みに見える命の輝きへの感動を感じた。結局文明を手に入れて潔癖なんてものになろうと私たちの体内では無数の菌が蠢いており、それに生かされているという事実。トライフォビアで潔癖の私たちが嫌悪し不快に感じるそのモティーフにこそ命の輝きがあるのだ。死を巻き込む勢いで突き進む草間彌生は本当に美しい。